お母さんがぐるりと私に向き直った。

「あなた予備校を一週間もサボっているらしいじゃない」
「……」

図星に私は押し黙った。迅をひとりにしておきたくなかったから、予備校は確かに休んでいる。予備校側からお母さんに連絡が行ったのだろう。

「どういうつもりなの?受験生でしょう」
「ごめんなさい。少し体調が悪くて……」
「どこに行っても馴染めない子ね!!」

言葉が棘みたいにぶつかってくる。たぶん、お母さんは思い出している。最初に入れてくれた私立中学で孤立していた私を。
私はいじめられているとは思わなかった。だけど、担任とお母さんの認識は違った。私がみんなに馴染もうとしないから、クラスの異分子になってしまった。お母さんは私のそういう性格が嫌いなのだ。

「別に協調性を発揮しろなんて言ってないわ。みんなと同じところに通って、自分の勉強をしろって言ってるだけよ」
「家ではしてるから」
「口ではなんとでも言えるでしょう!いつからサボりグセがついたの!?どうして、他の子と同じことができないの!?協調性がないなら、せめて真面目にはやりなさいよ!」

私は再び黙った。何を言っても話が通じないのだと思う。
お母さんは自分の思う通りにできなければ悪だと認定してしまうから。そして、私はつくづくお母さんの理想通りには生きられない。

「そうやって、死にそうな植物みたいに無気力に生きていくのが私の娘かと思うと吐き気がするわ!」

謝ればいいのか、うなだれればいいのかわからない。いつも通り反論は浮かばない。
押し黙って、拳を強く握る。