高校三年生、四月。

最後の一年は始まったばかりなのに、私の毎日は憂鬱。うららかな日差しも散りかけの桜も楽しめる気分にはならない。
電車で15分、さらに駅から人の波に乗って5分のところに私の通う高校はある。学校に到着すると、まっすぐ三年二組のクラスに向かった。
誰に挨拶をするでもなく席につき、鞄の中身を整理しつ文庫本をとりだしたところで、頭のてっぺんにごつんと衝撃がきた。

「真香、おはよー!」

見上げればそこには隣のクラスの優衣がいた。衝撃は優衣の拳だ。高一、高二と同じクラスだった彼女は最後の年でクラスが離れてしまった。

「乱暴」
「おはようでしょ?真香」
「おはよう、優衣」

ポニーテールを揺らして優衣がはつらつと笑う。背が高くバレーボール部で、はきはきとなんでも物おじせずに言う彼女は、一応私の親友だ。私とは正反対のタイプで、どうして私たちが仲良くなったか、いまだに謎だ。

「真香は放っておくとクラスで誰とも喋らなさそうだから、挨拶にきた」
「もう、やめて。子どもじゃないんだから」
「ほら、あっちにバレー部のさっちんとユメがいるよ。あんたも顔見知りじゃん。挨拶しておいで」

私は首を振った。

「わざわざ行くことじゃないよ」
「も~、真香は。これじゃ新しいクラスで友達できないよ?」