「会いたいね」

私の頬に一筋涙が伝った。
会いたい。言葉にすればなんて単純なんだろう。
会いたいんだ。私は迅に会いたい。ただひたすらに会いたい。
迅の顔を見て、もう一度笑い合いたい。たったそれだけの望みも叶わない。叶える術がない。
迅は逝ってしまった。

「二ヶ月だもんなぁ」

聖がどこか諦めを含んだような声音で言う。私もまた聖を薄情だとは思わない。私たちはどちらも諦めを飲み下さなければいけない。

「俺たちの兄ちゃんは死んじゃったんだな。まだ信じられないけど、今日はそれを受け入れる日なんだろ?」
「……うん、区切りにしなきゃいけない」

迅はもういない。だけど、私も聖も生きているんだ。
辛い。痛くて、苦しくて、涙はいつまで経っても枯れないけれど、私はこのモノクロの世界を歩いて行かなければならない。

「真香、後追うなよ」
「そんなことしたら、迅に嫌われるからしない」
「そうだよな。兄ちゃん、絶対許さないだろうな」

聖は私の気持ちを……ほのかな恋心を、薄々気付いていたのかもしれない。ふと、そんなことを思った。

「そうだ、母ちゃんが近いうちに家に寄ってくれって」

一足先に飲み終わったシェイクをゴミ箱に捨て、聖が思い出したように言った。

「このまえ、兄ちゃんの独身寮を片付けてきたんだ。そん時、真香が作ったミサンガがいくつか出てきてさ。兄ちゃん、古くなったやつも全部取っておいたんだな」

そういえば、迅も言っていた。私が作ったものだから捨てられないって。真っ赤なミサンガをこの五年いくつ作ったっけ。