雨が強くなる前に、私たちは迅の家の前にたどり着く。玄関先で傘をたたむと、迅がもう一度私の額に手を当てた。

「マナカのマナカらしいとこ、俺は嫌いじゃないけど、もうちょっと自分を出してもいいと思うぞ」
「なんの話?」
「あんまり、受験勉強、根を詰めるなって話」

私は薄く笑って背の高い従兄を見上げた。

「うん、そうする」



迅の家でお茶をご馳走になり、世間話をして帰った。
翌日、迅が特別機動隊に招集され九州に派遣されることが決まり、本人から連絡がきた。

その短いメッセージが私たちの最後のやりとりになると、このとき私は思わなかったのだ。