「心配しなくていいって」
「別に心配なんかしてないから」
私が強がったってどうせ見透かされているんだろうなと思う。それを言うなら、迅が勤務につくたび、毎日心配してるし不安に想ってる。だからこそのミサンガなのだ。
私は小さな手提げから迅に贈ろうと思っていた包みを出す。
「お、新しいミサンガ?」
「うん、機動隊招集がありそうなら、その前に渡せてよかった」
雨の中、私は立ち止まりその小さな紙袋の中から真っ赤なミサンガを取り出した。
「いつもの赤。これでいい?」
「いい、いい。な、つけてよ」
迅に請われるまま、私は歩道の隅で迅の左腕をとった。
傘を左肩に引っ掛け、顔を傾けて固定すると、手早くミサンガを手首に巻きつける。ぴったりと迅の左手首に馴染むそれを見て満足感でいっぱいになった。
「ありがと、マナカ」
「どーいたしまして。迅の家に行く用事終わっちゃったじゃん」
「そういうなよ、たぶんお袋、お茶の準備してるから一緒に行こう」
私は頷いて迅の横を歩き出す。傘と傘で私たちには距離がある。このくらいが心地いい。従兄妹同士の私たちはともすれば距離が近づきすぎてしまう。だから、私たちの間にはずっと雨と傘があったほうがいいくらいなのだ。
「別に心配なんかしてないから」
私が強がったってどうせ見透かされているんだろうなと思う。それを言うなら、迅が勤務につくたび、毎日心配してるし不安に想ってる。だからこそのミサンガなのだ。
私は小さな手提げから迅に贈ろうと思っていた包みを出す。
「お、新しいミサンガ?」
「うん、機動隊招集がありそうなら、その前に渡せてよかった」
雨の中、私は立ち止まりその小さな紙袋の中から真っ赤なミサンガを取り出した。
「いつもの赤。これでいい?」
「いい、いい。な、つけてよ」
迅に請われるまま、私は歩道の隅で迅の左腕をとった。
傘を左肩に引っ掛け、顔を傾けて固定すると、手早くミサンガを手首に巻きつける。ぴったりと迅の左手首に馴染むそれを見て満足感でいっぱいになった。
「ありがと、マナカ」
「どーいたしまして。迅の家に行く用事終わっちゃったじゃん」
「そういうなよ、たぶんお袋、お茶の準備してるから一緒に行こう」
私は頷いて迅の横を歩き出す。傘と傘で私たちには距離がある。このくらいが心地いい。従兄妹同士の私たちはともすれば距離が近づきすぎてしまう。だから、私たちの間にはずっと雨と傘があったほうがいいくらいなのだ。