階段を降り切り、自分の座席に向かう。知らず歩調が速くなる。
席に戻って座ろうなんて頭はなくなっていた。私は自分の席を通り過ぎ、在校生と保護者の間をすり抜け、最後は小走りになっていた。誰もが、代表の子はどうしたのだろうと思っただろう。
樹村、体調が悪いのかと川田先生が戸口で声をかけてきたので、はいとだけ答えて体育館を走り出た。
その背中は校庭を横切って校門に向かっている。
まって、どうして?
どうしてこんなところにいるの。
私は猛然と走った。土煙をあげ、たったっと大きな足音をたて、駆け寄った。
「迅!!」
その人、……有島迅が振り向いた。
くしゃっと笑う笑顔は間違いない私の従兄。
春に死んでしまい、あの夏の日消えてしまった私の想い人だ。
「よぉ、マナカ。見つかっちゃったか」
「なにやってるの……?また化けてでちゃったの?成仏できなかったの?それともこれは夢?」
「残念ながら、今度は人間です。生身です。夜も透けないよ」
迅はとぼけた顔をして、ワイシャツの二の腕をぱんぱんとたたいてみせる。まだ信じられなくて、どういうことかわからなくて、私は目を見開いたまま口がぱくぱくと空振りしてしまう。
目の前には生きた迅がいるのだ。
「卒業おめでとう、アンド大学合格おめでとう。前髪あげてるせいかな。なんかおとなっぽくなった」
迅は私のおでこに触れる。
指の感触に、びくりと肩を震わせてしまった。
席に戻って座ろうなんて頭はなくなっていた。私は自分の席を通り過ぎ、在校生と保護者の間をすり抜け、最後は小走りになっていた。誰もが、代表の子はどうしたのだろうと思っただろう。
樹村、体調が悪いのかと川田先生が戸口で声をかけてきたので、はいとだけ答えて体育館を走り出た。
その背中は校庭を横切って校門に向かっている。
まって、どうして?
どうしてこんなところにいるの。
私は猛然と走った。土煙をあげ、たったっと大きな足音をたて、駆け寄った。
「迅!!」
その人、……有島迅が振り向いた。
くしゃっと笑う笑顔は間違いない私の従兄。
春に死んでしまい、あの夏の日消えてしまった私の想い人だ。
「よぉ、マナカ。見つかっちゃったか」
「なにやってるの……?また化けてでちゃったの?成仏できなかったの?それともこれは夢?」
「残念ながら、今度は人間です。生身です。夜も透けないよ」
迅はとぼけた顔をして、ワイシャツの二の腕をぱんぱんとたたいてみせる。まだ信じられなくて、どういうことかわからなくて、私は目を見開いたまま口がぱくぱくと空振りしてしまう。
目の前には生きた迅がいるのだ。
「卒業おめでとう、アンド大学合格おめでとう。前髪あげてるせいかな。なんかおとなっぽくなった」
迅は私のおでこに触れる。
指の感触に、びくりと肩を震わせてしまった。