大きな花束はスイートピー、バラ、チューリップ、カスミソウ、ストックなどなど……とにかく派手な花束だ。上品とか、美しいとかいう形容詞とはどうも趣が違う。

お父さんがどんな注文をしたのかわからないけれど、こういうことに疎い人だから、きっと要領を得ないことを言って花屋さんを困らせたんだろうなと想像して笑ってしまう。

「マナカ、メッセージがついてるわよ」

カードを開くとお父さんの直筆でメッセージが書かれてあった。

「『卒業おめでとう。三年間がんばりましたね。マナカの晴れ姿、さぞ綺麗だっただろうなと思います。今度、写真を見せてください』だって」

どうにも噛み合わないメッセージに苦笑いすると、お母さんがため息をついてから笑って言った。

「お父さん、たぶん卒業式を今日だったと思ってるわね」
「だよねぇ、やっぱり!もう!お父さんらしいなぁ!」

私とお母さんは顔を見合わせて笑った。卒業式を一日間違えてお花を送ってくるお父さん。本当におっちょこちょいだ。

私たち家族は随分前にバラバラになってしまったし、お父さんとお母さんの仲が修復されることはこの先もないだろうけれど、こんなふうにコミュニケーションはとれる。笑い合うことができる。
いつか、……本当にいつかだけど、“元家族”として食事したりする日もくるかもしれない。それはちょっと楽しみだ。

「真香、お父さんに電話してやりなさい。お花の御礼と、日にち間違ってるって言ってやりなさい。あと、写真見せる日にち、約束するのよ。楽しみにしてるみたいだから」

お母さんの言葉に、私は強く頷いた。お母さんが楽しそうなのが嬉しかった。