お母さんは相変わらずきつい口調で私に意見することがまだ多々あるけれど、以前は逃げたり黙り込んでいた私が、今は応戦するのだ。
互いの気持ちを伝え、たとえひどい喧嘩になっても、話し合う努力を放棄しない。

かつての私はお母さんの思う通りにはできないと諦め、話し合い意思を疎通し合うことを諦めていた。そして何より争うことが嫌いだった。

喧嘩を良しとしているのではない。私とお母さんには、現段階で必要なコミュニケーションなのだと思う。

私はあらたにできた夢を、お母さんに話してある。
この件も、最初はお母さんの猛反対に遭い、それなら大学の学費は出さないとまで言われた。しかし、根気強く話し合い、ときに喧嘩もし、それでも私が意志を曲げなかったことでお母さんも折れてくれた。

『真香の人生だから、真香の決めたことを応援したい』

そんな言葉をお母さんの口から聞けるとは思わなくて、私は泣いてしまったっけ。私たちは親子なのだ。ようやく親子に戻れたのだ。


リビングに戻ると、お母さんは準備を終え、お茶を飲んでいた。

「桜餅あるわよ、食べる?」
「食べる、食べる」
「この前、トシさんからいただいたあんこ美味しかったわねぇ」
「お母さん、ほとんどトーストにぬって食べちゃったでしょう」

明日は、着付けとメイクがあるからお母さんだけ早く家を出る等の話をしていたところに、ドアチャイムが鳴った。なんだろう、時刻は21時近くだ。

インターホンから宅配便との声。受け取りに出てみれば、宅配便のお兄さんが箱入りの大きな花束を重いですよ、なんて言って手渡してくる。差出人はお父さんだ。
よろよろとリビングに運び開けてみた。