「春香おばちゃんにはお袋に連絡してもらえばいいだろ。マナカ、ガリガリだからな。うちに来て、腹一杯食べて少し太れ」
「やだぁ」

私は口をへの字にしながら、有島家の食卓に混ぜてもらえることが嬉しかった。ひとりで食べる食卓も、母と食べる食卓もあまり楽しいものじゃないから。

「マナカはあと3キロ太れば、女らしくおっぱい出てくるぞー」

ナチュラルにセクハラをする迅に私は向かいの席からチョップした。

「セクハラ。次は訴えます」
「怖ぇ、マナカ怖ぇ~」

迅はきっと、私みたいな痩せっぽちの子ども体型の彼女なんていたことないんだろうな。
迅は昔からとにかくモテたし、私も何人かの彼女は覚えている。みんな綺麗な人だった。今はいるかわからないし、聞けないけれど、どっちみち私じゃ鼻も引っ掛けてもらえない。
迅にとって、私は聖と一緒。可愛い弟妹なんだ。そんな私が気持ちを伝えて、迅が困る顔が眼に浮かぶ。
私は最初から土俵に上がれもしない。だから、この気持ちは絶対に口にしないのだ。

「迅、ここ出たらシュークリーム買いに行こ。伯母さんにお土産」
「お、気がきくな。お袋、パティスリーヨコエのシュークリーム大好きだからな」
「伯母さん、最近はシェ・シマダのにハマってるんだよ。知らないでしょ」
「うわ、女だけの情報網」

迅の笑顔が好き。迅の全部が好き。
だから、私はこのまま妹でいたい。恋人には終わりが来るけれど、妹に終わりはないもの。