「トシさん!トシさん、そこにいるなら返事して!」

私は怒鳴った。

「生きて!絶対に助けるから!お願い!」
「トシさん!俺より先に逝くなんて聞いてないよ!」

迅も怒鳴った。ふたりで家の破片をかき分け、退け続ける。何度も転んだ。土砂に埋まりかけた。それでも立ち上がり、私と迅は自分たちの力だけで土砂をかきわける。
すると、背後から大声が聞こえる。

「そっちにトシさんがいるのか!?」
「手伝うぞ!」

近所のおじさんとおじいさんが四人、軍手に長靴姿で土砂の山を登ってくるのだ。

「助かります!勘太郎が吼えているので、このあたりだと見当をつけてます!」

迅がそう言って、大きな壁の破片を退けた。すると、土砂に左の顔を半分埋めた格好で、トシさんが倒れているのが見えた。

「トシさん!!」

私が叫んでも、意識がないのか身動ぎひとつしないトシさん。下半身は家の材木の下敷きになっているようだ。

「いたぞー!」
「トシさんだ!」

その場の男性たちが叫び、遠くから警察官や消防隊員が駆けつけてくる。救急車の音も聞こえる。
私は重たい勘太郎を引きずりながら、土砂から降りた。ここからは男手が必要なのはわかったからだ。

「せぇの!!」

男性たちが掛け声でトシさんの上の材木を退けていく。救急隊と担架も私たちの横で待機している。

そしてとうとう、迅がその手でトシさんを土砂の中から抱き上げた。
わあっと歓声が上がったのは、トシさんが痛そうに身体を動かしたからだ。

トシさんは生きている。