「台風でやられる前に採るんだよ。普通の台風くらいなら放っておくんだが、今回は馬鹿みたいな嵐になるらしいからね」
「でも、食べきれないですよ、こんなに」
「近所や街場の知り合いに安く分ける約束をしてんだ。午後に取りに来るんだから、ちゃっちゃと手を動かしな」
さすが、トシさん。しっかりしてる。せっかくの野菜を無駄にするわけがない。
私は軍手をして、教えてもらうままに園芸用のハサミでパチンパチンとナスをもいでいく。
「トゲがあるからね。指さすんじゃないよ」
「はい!」
台風接近のせいか曇っていても湿気が多く蒸し暑い。中腰で同じ動作を繰り返していると汗が吹き出してきた。
ナスとキュウリを採り終え、トウモロコシとミニトマトの畝に移る。トウモロコシは根元からバシッと音を立てて折る。これは面白い。私は髪を振り乱して一心不乱にトウモロコシを折る。
厚い前髪が鬱陶しくて、泥のついた軍手の甲でかきあげた。首にかけていたタオルをターバンみたいにして髪をまとめると、トシさんが笑った。
「マナカ、あんた可愛い顔してたんだねぇ」
「褒めても何にもでないですよ」
「前髪なんか切って顔出しゃいいのに。損してるねぇ。馬鹿だねぇ」
意地悪に笑うトシさんに私はへの字口を向ける。
迅にもよく言われたことだけれど、それは従兄のひいき目というか、何かにつけて自信のない私を励ますための言葉だと思っていた。だから、まったく歯に衣着せないトシさんに可愛いだなんて言われて驚いてしまった。嬉しいより猛烈に恥ずかしい。
「ほら、次はミニトマトだよ」
トシさんのミニトマトは私の大好物だ。低木に実っている赤くて丸い実は土埃を被っていてもとても美味しそうに見えた。ひとつもいで、軍手の綺麗なところできゅっきゅと擦ってみる。赤が艶々と一層鮮やかになる。
「でも、食べきれないですよ、こんなに」
「近所や街場の知り合いに安く分ける約束をしてんだ。午後に取りに来るんだから、ちゃっちゃと手を動かしな」
さすが、トシさん。しっかりしてる。せっかくの野菜を無駄にするわけがない。
私は軍手をして、教えてもらうままに園芸用のハサミでパチンパチンとナスをもいでいく。
「トゲがあるからね。指さすんじゃないよ」
「はい!」
台風接近のせいか曇っていても湿気が多く蒸し暑い。中腰で同じ動作を繰り返していると汗が吹き出してきた。
ナスとキュウリを採り終え、トウモロコシとミニトマトの畝に移る。トウモロコシは根元からバシッと音を立てて折る。これは面白い。私は髪を振り乱して一心不乱にトウモロコシを折る。
厚い前髪が鬱陶しくて、泥のついた軍手の甲でかきあげた。首にかけていたタオルをターバンみたいにして髪をまとめると、トシさんが笑った。
「マナカ、あんた可愛い顔してたんだねぇ」
「褒めても何にもでないですよ」
「前髪なんか切って顔出しゃいいのに。損してるねぇ。馬鹿だねぇ」
意地悪に笑うトシさんに私はへの字口を向ける。
迅にもよく言われたことだけれど、それは従兄のひいき目というか、何かにつけて自信のない私を励ますための言葉だと思っていた。だから、まったく歯に衣着せないトシさんに可愛いだなんて言われて驚いてしまった。嬉しいより猛烈に恥ずかしい。
「ほら、次はミニトマトだよ」
トシさんのミニトマトは私の大好物だ。低木に実っている赤くて丸い実は土埃を被っていてもとても美味しそうに見えた。ひとつもいで、軍手の綺麗なところできゅっきゅと擦ってみる。赤が艶々と一層鮮やかになる。