炊飯器からごはんをよそっていると、迅が戻ってきた。珍しい。朝、勘太郎の散歩に行ってからはそのままトシさんちで手伝いなのに。

「マナカ、朝飯食ったら、トシさんち行こう」
「なに?勘太郎、具合悪いとか?」

勘太郎にはおもちゃ用にぬいぐるみを縫ってあげたばかりだ。一昨日渡しに行ったとき、勘太郎はめずらしく私の手をぺろぺろ舐めてくれた。お礼を言われてるみたいだった。

「違う違う。勘太郎じゃなくて台風だよ」

迅が顔の前で手を振る。

「この家、テレビないから気づくの遅れたけど、台風がきてるんだよ。本州上陸の恐れ。大雨警戒。トシさんちのテレビで見た」
「え?そうなの?」

私は慌てて携帯の天気アプリを開く。本当だ。台風10号情報なんて、でかでかと見出しが躍っている。
予報円は太平洋から関東に直撃に見える。

「明日上陸?どおりで空が暗いと思った!」
「台風が大雨連れてくるんだってよ。すげー降るらしいから、トシさんちの補修と畑の保護と……色々あるから手伝えよ」
「うん!わかった」
「夕方から降り出すって。帰り道、マナカもメシとか買い込んだ方がいいぞ。懐中電灯やラジオ出しとこう」

迅はばたばたと納戸に向かう。そうと決まれば急がなきゃ。お盆明けだから台風シーズン到来なんだろうけれど、知らない土地と慣れない家で遭遇する台風はちょっと不安だ。

私はちゃぶ台につくなり、ごはんに昆布の佃煮を山盛り乗せて勢いよくかき込んだ。
優衣とお母さんへの連絡はトシさんちから帰ってきたらにしよう。