思わず背筋がゾッとした。だって日向君、“バラしたらすぐ分かっちゃうけど”のところで目つきが変わったんだもん。……わずかに指が震えている。その震える指のうち、日向君が人差し指だけをつかんだ。
 そして、その人差し指を私の口に押し当てた。
「二人の秘密だよ」
 私の手を握る彼の手は冷たく、そして思ったよりずっと、力強かった。ブルーグレーの瞳に吸い込まれそうになりながら、私は操られたかのように、こくりと頷く。
「……あ、そういえば、この前お詫びにもらったチョコ、美味しかったよ。ありがとう」
 この、どこかテンポがずれていて、マイペースな同級生は、一体この先の私の人生をどれだけ搔(か)き乱していくのだろう。このときの私には、全く想像がつかなかった。