「泣くわけないでしょ」

まさか、と思いながらも答えるけれど、猫はまだなにか言いたげな表情で私を見てくる。

しばらく迷ってから、

「……私の声が聞こえるの?」

自信なさげにつぶやくと、私をチラッと横目で確認してくる。


やっぱり聞こえているんだ……!?


ごくりと唾(つば)を飲みこんだ瞬間、

「バカ。どこ見てんだ」

左から声が聞こえ、ゆるゆると顔を向ける。