運ばれてきたお弁当箱を、それぞれがいぶかしげにじっと眺めている。

「どうしてお弁当なの?」

涙をぬぐいながら夏芽ちゃんが聞くと、雄也は肩をすくめた。

「食えばわかるさ」

「ヘンなの」

蓋を開けると、右半分にはさっき作っていた卵焼きやウインナー、そして肉じゃがらしき煮物が詰められていた。そして、左側には……。

「おにぎりですか?」

河村さんがとまどったように口にした。

「この間もそうでしたよね」

お母さんも同じように眉をひそめている。

三つならんでいるおにぎりは、いつも店で出すそれとは明らかに違っていた。

まず、海苔が巻いていなかった。それに倒した状況で置かれている。さらに不思議なのは、中身の具だ。

梅や鮭が白米に包まれているのではなく、おにぎりの三角型の平面部分に埋めこまれて半分顔を覗かせていた。あとから押しこんだように無造作な具材が、気をつけて持たないとこぼれてしまいそう。

「うそ……なんで?」

声のほうに視線をやると、夏芽ちゃんの様子がおかしい。

おにぎりを見つめる視線が左右に揺れて、信じられないような顔をしている。

答えを求めるように夏芽ちゃんは雄也を見た。

「どうして……? どこでこれを?」

「見覚えがあるのか?」

「うん、うん……」

声を震わせながら、夏芽ちゃんはまたおにぎりを注視する。

「これ、お父さんが、お父さんが作ってくれたおにぎりに……似てる」

まるで消えてしまうかのように、顔を近づけてつぶやく。

「そうか」

「ねぇ、どうして? なんで!?」

オロオロする夏芽ちゃんに雄也はなぜか河村さんを見やった。

「もう本当のことを言うべきだろう?」

雄也は、なにを知っているのだろう。

「いや、しかし……」

河村さんはあからさまに動揺したそぶりを見せた。

なにが起きているのかわからずに、私は取り残されている気分。

それは夏芽ちゃんも同じようで、みんなの顔を何度も見回している。

その肩をお母さんが抱いた。

「お母さん?」

「ごめんなさい……。夏芽、ごめんなさい」

そう言ったお母さんはもう泣いていた。

「どうしたの? お母さんどうしちゃったの?」

「お母さん、なんにも夏芽のことわかっていなかった。まさか、悩んでいる原因がそれだったなんて、知らなくって……」