そう紹介すると、納得したのか鼻から息を吐いて調理にとりかかる。
わかっているよ。
きっと心の中で『余計なことをしやがって』って思っているんだよね。
気づかぬふりをして、ふたりにお茶を出した。
「あの子、ここに毎朝来ているんですね」
店内を見渡しているお母さんは、ふう、とため息をついた。
まだ家庭内の問題は解決していないみたい。それは、今朝の夏芽ちゃんの様子を見てもわかった。あいかわらず元気がなかったから。
「メニューはどこですか?」
スーツ姿の河村さんが尋ねてくるので、チラッと雄也を見るが答える気はないらしく手際良く料理を進めている。
「ここにはメニューはありません。毎朝、その日の仕入れによって日替わり朝ごはんを提供しているんです」
「へぇ」
相好を崩した河村さんはワクワクしたように目を輝かせた。
その隣では曇り顔のお母さんが、意を決したように私を見た。
「この間は本当にすみませんでした」
「もうその話はいいんです。私も大きな勘違いをしていましたから」
雄也と目が合うと、『やっとわかったのか』とでもいうふうに肩をすくめている。
「あの子、あれから少しは口をきいてくれるようになったんですけれど、まだこの人には打ち解けないままで……」
「そんな話やめなさい。迷惑だろう」
河村さんがたしなめると、お母さんはハッとしたように口を押さえた。
「大丈夫です。私、その話がしたくておふたりをお招きしたんですから」
そう言うと、これみよがしにため息をつく雄也だったけれど、非難はしてこなかった。
「僕が悪いのです」
河村さんの声に顔を向けた。
「中学生になれば夏芽ちゃんも受け入れてくれるなんて、勝手に思っていた。……でも、まだ早かったのでしょうね」
寂しそうに言う河村さんの顔を、なぜか雄也が手を止めて眺めている。
そんな河村さんの言葉に、お母さんは視線を落とした。
「私も同じです。夏芽を第一に考えていたはずなのに、あの子にはそうは映っていなかったんですよね」
ふたりは本当に夏芽ちゃんのことを思っているんだ、って確信した。それなのに、夏芽ちゃんは昔の思い出の中にいて新しいお父さんを受け入れられない……。
お互いを思いやっているのに、ボタンをかけ違えているよう。
わかっているよ。
きっと心の中で『余計なことをしやがって』って思っているんだよね。
気づかぬふりをして、ふたりにお茶を出した。
「あの子、ここに毎朝来ているんですね」
店内を見渡しているお母さんは、ふう、とため息をついた。
まだ家庭内の問題は解決していないみたい。それは、今朝の夏芽ちゃんの様子を見てもわかった。あいかわらず元気がなかったから。
「メニューはどこですか?」
スーツ姿の河村さんが尋ねてくるので、チラッと雄也を見るが答える気はないらしく手際良く料理を進めている。
「ここにはメニューはありません。毎朝、その日の仕入れによって日替わり朝ごはんを提供しているんです」
「へぇ」
相好を崩した河村さんはワクワクしたように目を輝かせた。
その隣では曇り顔のお母さんが、意を決したように私を見た。
「この間は本当にすみませんでした」
「もうその話はいいんです。私も大きな勘違いをしていましたから」
雄也と目が合うと、『やっとわかったのか』とでもいうふうに肩をすくめている。
「あの子、あれから少しは口をきいてくれるようになったんですけれど、まだこの人には打ち解けないままで……」
「そんな話やめなさい。迷惑だろう」
河村さんがたしなめると、お母さんはハッとしたように口を押さえた。
「大丈夫です。私、その話がしたくておふたりをお招きしたんですから」
そう言うと、これみよがしにため息をつく雄也だったけれど、非難はしてこなかった。
「僕が悪いのです」
河村さんの声に顔を向けた。
「中学生になれば夏芽ちゃんも受け入れてくれるなんて、勝手に思っていた。……でも、まだ早かったのでしょうね」
寂しそうに言う河村さんの顔を、なぜか雄也が手を止めて眺めている。
そんな河村さんの言葉に、お母さんは視線を落とした。
「私も同じです。夏芽を第一に考えていたはずなのに、あの子にはそうは映っていなかったんですよね」
ふたりは本当に夏芽ちゃんのことを思っているんだ、って確信した。それなのに、夏芽ちゃんは昔の思い出の中にいて新しいお父さんを受け入れられない……。
お互いを思いやっているのに、ボタンをかけ違えているよう。