私に気づいたお母さんがはたりと足を止めた。後ろの新しいお父さんも気づいたようで、お母さんを追い抜いて早足でやってきた。
「きみ……さっきの?」
仕方がない、と覚悟が決まった私は、
「はい」
短く答えた。
「さっきはすまなかった。まさか、あんなことになるなんて」
白髪交じりの新しいお父さんが、深くお辞儀をしたので驚いた。
「いえ、私こそ……」
ごにょごにょと言う私に、お母さんがとまどったように口にした。
「あなた、どうしてここに? やっぱり夏芽の知り合いなんですか?」
「……お客さんです。毎朝、私が働いているお店に朝ごはんを食べに来てくださっています」
そう言うと、思い当たるのかお母さんは肩を落とした。
「そうだったのね……。さっきは本当にごめんなさい」
しおらしい姿に、いたたまれなくなった。
「私こそ勝手に勘違いして・虐待・だなんて言ってしまいました。申し訳ありませんでした」
雄也の言った通り、突っ走ってしまったのだ。
雄也はそれを知ってて『余計なことはするな』って言ったのかな?
どちらにしても大失敗だ。
ペコペコと頭を下げ合う私たちは、どちらからともなく照れ笑いをした。
すごく人の良さそうなふたりだ。
勝手に勘違いした自分が、夏芽ちゃんじゃないけど情けなくてたまらなかった。
「いつも夏芽がお世話になっています」
そう言った新しいお父さんは、名前を河村大悟と名乗った。
話してみればすぐにわかる。絶対に暴力なんて振るわない人だ、って。おだやかで人の良さそうな笑顔は、取り繕ってできるものじゃない、と思ったから。
家に上がることをすすめるふたりにやんわり断ってから、ふと思いついた。
「もしよかったら、今度お店に来ませんか?」
一瞬だけ雄也の苦い顔が浮かんだけれど、思い立ったらすぐに行動。
さっきの失敗のことは忘れて私はそう提案していた。
それから二日後の昼過ぎ、お母さんと河村さんは本当にお店にやってきた。
見たことのないふたりが店に入ってくるのを、雄也はいぶかしげな表情を隠そうともしないで見ている。
「おはようございます。どうぞお座りください」
昼なのに朝の挨拶をした私が、席に案内するのを変わらぬ表情で雄也が追ってくる。
「夏芽ちゃんのご両親です」
「きみ……さっきの?」
仕方がない、と覚悟が決まった私は、
「はい」
短く答えた。
「さっきはすまなかった。まさか、あんなことになるなんて」
白髪交じりの新しいお父さんが、深くお辞儀をしたので驚いた。
「いえ、私こそ……」
ごにょごにょと言う私に、お母さんがとまどったように口にした。
「あなた、どうしてここに? やっぱり夏芽の知り合いなんですか?」
「……お客さんです。毎朝、私が働いているお店に朝ごはんを食べに来てくださっています」
そう言うと、思い当たるのかお母さんは肩を落とした。
「そうだったのね……。さっきは本当にごめんなさい」
しおらしい姿に、いたたまれなくなった。
「私こそ勝手に勘違いして・虐待・だなんて言ってしまいました。申し訳ありませんでした」
雄也の言った通り、突っ走ってしまったのだ。
雄也はそれを知ってて『余計なことはするな』って言ったのかな?
どちらにしても大失敗だ。
ペコペコと頭を下げ合う私たちは、どちらからともなく照れ笑いをした。
すごく人の良さそうなふたりだ。
勝手に勘違いした自分が、夏芽ちゃんじゃないけど情けなくてたまらなかった。
「いつも夏芽がお世話になっています」
そう言った新しいお父さんは、名前を河村大悟と名乗った。
話してみればすぐにわかる。絶対に暴力なんて振るわない人だ、って。おだやかで人の良さそうな笑顔は、取り繕ってできるものじゃない、と思ったから。
家に上がることをすすめるふたりにやんわり断ってから、ふと思いついた。
「もしよかったら、今度お店に来ませんか?」
一瞬だけ雄也の苦い顔が浮かんだけれど、思い立ったらすぐに行動。
さっきの失敗のことは忘れて私はそう提案していた。
それから二日後の昼過ぎ、お母さんと河村さんは本当にお店にやってきた。
見たことのないふたりが店に入ってくるのを、雄也はいぶかしげな表情を隠そうともしないで見ている。
「おはようございます。どうぞお座りください」
昼なのに朝の挨拶をした私が、席に案内するのを変わらぬ表情で雄也が追ってくる。
「夏芽ちゃんのご両親です」