カバンに手を伸ばした私に、雄也の声が聞こえる。


「明日からどうするんだ?」


「まぁ……。ハローワークに行って、地獄の就職活動の再開をするしかないよね」


財布の中身を見て、ふと気づいた。

ここのごはんの料金を結局聞いていない。


「いいよ」


「え?」


「代金はいらん。まかない食みたいなもんだから」


たしかに今日から無職になるわけだし、タダにこしたことはない。

でも、どうして?

うれしさよりもとまどいで不安になる私に、雄也は「なぁ」と言った。

しばらく口をへの字に結び、なにかを決心したように再び口を開いた雄也が言う。


「自然な流れをもうひとつ提案していいか?」


断る理由もないので、うなずくと彼は言った。



「明日からここで働かないか?」