――どれくらい泣いたのだろう。
ようやく息をうまく吸えるようになった私は、不思議と心がすっきりしていた。
重荷をおろせて軽くなったような気持ちには我ながら驚いた。
さっきまでの悲惨な気持ちは影をひそめ、いつものように気楽さが顔を出している。
そうだよ、なにも死ぬわけじゃないし。
でも新入社員、というカタガキは二度と使えないんだよね……。
それでもいい。
中途採用でも、仕事があるだけで幸せだということを学べたのだから。
「ありがとう」
素直に言葉にして雄也の顔を見た。
あんなに意地悪そうに見えた顔も、なんだかやさしく見えるから不思議。
目の前の雄也が、悪い人でない、ってことがわかった。
あいかわらずなかなか笑顔は見られないけれど、穏やかな口調とおいしい料理が私の心を癒してくれた。
「ああ、最後のひと口がもったいない」
なごり惜しく西洋卵焼きを口にほうりこんで、ゆっくりかみしめる。
「そんなに気に入ったのか」
まんざらでもなさそうな雄也が言うので、思い出す。