なんだか、不思議な人。

まるで私の気持ちを読んでいるみたい。


「泣くわけないでしょ。そういうキャラじゃないし」


つぶやくように言って、またオムレツを口に運んだ。

何度食べてもくやしいくらいおいしい。

四月とはいえ、ずいぶん町をさまよっていたのか体が冷えていたことを、温度のある食べ物で実感した。

みじめで凍りかけていた気持ちが、少しだけ溶けていくよう。


「お前のキャラまでは知らん」


そっけない口調に、意地っ張りな感情がまた生まれた。


「だって、もう何年も泣いてないし、泣きかただって忘れたし」


「そうか」


「それに、そこまで悲しいことって人生でそうそう起きないものでしょ」


強がり。

言いながらわかっている。

だけど、涙なんて出ない。

でも……。


「そうそう起きないことが起きたってわけか」


口に入れたオムレツはまだ温かくて、じんわりと心まで温かくしてくれた。