「今日はこれな」

ぼそぼそという店主は、木べらに載った魚を小さな木皿に移すと床に置いた。


「なーん」

と、答える猫に目を丸くした。

なんだかおもしろい鳴き声……。

店主はため息をつく。


「文句言うな。最高級品だぞ」


「なんー」


「まぁ、おいしい部分はほとんど抜けちゃってるがな」


まるで会話をしているみたい。

ようやく食べだした猫を見る店主は、意外にも柔らかい表情になっている。

さっきまでの無愛想さとはうってかわって、目じりを下げほころんだ口元は違う人にすら見えた。

じっと観察してしまっていたことに気づいて、あわてて食事に意識を戻した。