「卵に出汁が入っているんですか?」


「まあな」


そう言うと男性は、

「ナム」

と、短く発した。


「ナム?」


聞きかえした私の左側で、太猫が「なーん」と答えて背伸びをした。


「あ……この子の名前?」


ナム、と呼ばれた猫はしゅるりと席から下りると悠然とカウンターの横に歩いてゆく。

私の後ろを通り過ぎるときに合った目が、なんだか挑戦的に思えて知らずにムスッとした顔をしてしまった。

しっぽを振りながら歩くお尻に、オスであるシンボルの丸い球がふたつ揺れていた。


飼い主に似て愛想がないこと……。