お餅は私とお父さんの大好物だった。

お正月だけじゃなく我が家では昔、よくお父さんが日曜日になるとお餅を焼いてくれた。

トースターで焼いたお餅に海苔を巻いて醤油をつけて熱々をほおばる。

私は砂糖醤油にしてもらって、それを作るお父さんの横顔を見てワクワクしたものだ。


ほわっと心が温かくなったのは、温度のせいだけじゃない。


よみがえる記憶の中の温度。

こんな人生最悪な日に偶然入ったごはん屋さんで、まさかオムレツの中にお餅が入っているとは思わなかったけれど、そのおかげで少し元気が出た気がした。

それに、お餅が卵とマッチしているだけじゃなくこのオムレ……いや、西洋卵焼きには細切りの玉ねぎや椎茸が入っていて、おいしい。

ケチャップも、よく口にするそれと違って、出汁で味付けしているみたい。

先ほど言っていた『西洋卵焼き』と日本語にしている理由がわかった。


「おいしいです」


素直にそう感想を伝えるけれど、男性は、

「あたりまえだ」

と、澄ましている。


客が褒めたのにそっけない人だ。