「主食は中に入っている」

そっけなく言われ、最後に湯呑に入った温かいお茶が置かれた。

今朝は出社初日で緊張していて、朝食も食べていなかったから、この香りに空腹を感じないわけがない。

どんなに悩みがあっても、お腹がすくだけまだマシなのかもしれない。

匂いだけで少し気持ちが回復した気がするなんて、単純な私だ。


「いただきます」


手を合わせる私に見向きもせず、もう男性は洗い物を始めているようだった。

箸で黄色い卵に切れ目を入れると、ほわっと深い白色の湯気が立ちのぼった。

半熟かと思ったけれど、中までしっかりと火が通っているよう。

お母さんの作るオムレツもこんな感じだったな、と思い出し口元が緩んでしまう。

ひと口大に切って口元に運ぶと、なにかが卵の中から伸びているのに気づく。

チーズかも、という予想は、口に入れて間違いだったと気づく。


「あ、お餅?」


「初めて正解したな」