こうやって言いたいことをいつも口にしてしまうのは、昔からの長所でもあり最大の短所でもある。


「日本語にしているのには、ちゃんと意味がある。食べればわかる」


平然と言ってのけた男性に曖昧にうなずく。

簡単には教えてくれないらしい。

それにしても、甘いバターの香りが食欲をそそる。

卵がふっくらとしていて、見ただけできめ細かい仕上がりなのがわかる。

朱色の箸がカウンターに置かれた。

ナイフとフォークじゃないのも、『和』にこだわっているということか……。

そういえば幼いころは、朝ごはんのオムレツが楽しみだった。

記憶の底に沈んでいた朝の光景が湯気の合間に見えた気がした。

いつしか、時間に追われてコーンフレークをかきこむことが朝の習慣になってしまっていた。


「熱いうちに食うといい」


男性の声にふと、気づいた。


「あの……パンは?」


「は?」


ギロッとにらまれて口を閉じた。

和食にこだわっている人に愚問だった。