痛む胸をごまかしながら改めて店内を見てみると、古い家屋を修繕したのか柱は年代ものと言えそうな代物だった。

木目の壁が温かさを感じさせ、居心地がいい。店内にBGMはなく、なにかを炒めている音だけが心地良く耳に届いている。

木べらがフライパンをたたく音がコツコツと鳴っている。

男性の顔を改めて観察すると、すごく整った顔をしていた。

真剣な目で手元を注視している姿から、料理に真面目な人なんだろうなと思う。

職人肌なら、愛想がないのも仕方ないのかもしれない。

というか、この人、まるで一度も笑ったことがないのではと思うほど無表情で、笑顔がまったく想像できない。

人生最悪の日に、偶然入った店で料理を待っているなんて、朝の私は思いもしなかっただろう。

これで高額請求なんてされたら、この町に来たことを心から後悔しそう。

左端の席に座っている猫はまるで匂いに興味がないように、気持ちよさげに目を閉じている。