そこまで考えて、思い出した。

ああ、初任給はもうもらえないんだ……。

お腹のあたりがモヤモヤしてしまい、手で押さえながら深呼吸をした。

カウンターの向こう側では男性が料理を始めたらしく、包丁が刻む規則正しい音が聞こえている。

すぐにジュワという音が聞こえたかと思うと、油の跳ねる音が聞こえてきた。

遠い夏の花火の音みたいに、パチパチとリズムを奏でている。

違うのは、火薬の匂いではなく香ばしい香りが漂い始めたこと。

もう作り始めたのなら焦っても仕方ないのか。


……そう、いつもこうしてイレギュラーな出来事が起きても、動じずに受け入れてやってきた。


どんなことが起きても平然としている私に、『鉄の心臓』なんてあだ名をつけた友達もいたくらい。



だけど、今朝のはちょっと予想の範囲外だったから……。