「和食屋さん、ですか?」

私の質問に答えないままあからさまに不機嫌な表情。

どうやら違うらしい。


「じゃあ、洋食?」


平屋の日本家屋を改修して造ったと思われるこのお店。

今流行りの古民家カフェみたいな風情の洋食屋ってこともありえると思ったから。

だけど、男性の眉間に深いシワが寄ったのでこれも間違い、と気づく。


「メニューはどこにあるのですか?」


「そんなものはない」


「ない?」


さっきのぼったくり店の発想が、急浮上してくる。

これは本当にマズイ状況かもしれない。

引っ越しで思った以上にお金がかかってしまったし、初任給までは厳しい生活になるのだから高額請求がきたら一巻の終わりだ。