……どうしよう。
ひょっとしたらぼったくりの店なのかもしれない。
『店長のおすすめ』とか言って、高額な料金を取られる話をニュースで見たことがあった。
たしか、メニュー表がないのが特徴とかなんとか……。
古都奈良で、そんな店があるなんてイメージできないけれど、観光客も多いだろうし。
ふと気づくと、カウンターになにか置かれている。
それは、一枚の絆創膏。
「……え?」
「使うといい」
そう言った男性はやっぱり私のことなんて見ずに手を洗いだしている。
水の音が響く店内で首をかしげた。靴ずれのことなんてしゃべった記憶がない。
というか、まだほとんどしゃべってもいないのに、なんでわかったの?