のれんのすき間から家の中を覗くと、木で作られたカウンターと同じ色のイスが四脚見えた。

そしてその向こうには小さな厨房らしきものがある。


……お店だったんだ。


そもそも普通の家庭では道路に面したところにベンチなんて置かないだろうし、のれんだって出していないよね。

でも、壁にものれんにも店の名前は書いていない。

いぶかしがりながらも、なぜか私は吸い寄せられるように中に入って行った。


「そこ」


カウンターの中に姿を現した男性が右の一番端っこの席を指さす。


左端のイスにはさっきの茶猫が当然、といった顔で座っていた。