本当は友季子さんに言いたかった言葉だった。

力になりたかったのに、あまりにひどすぎる。時間差でやってきたのは怒りに似た感情。

「だから余計なことはするな、って言ったろ?」

あたりまえのように言う雄也を見て思う。こういうときにいちばん相談してはいけない人だった、と。

和豆が「ふーん」と、組んだ両手にあごを載せた。

「これが例の友季子さんの話かしら?」

「そうだ」

その言いかたが、「まったく」とぼやいているように聞こえた。

ならまちで働いて、少しずつ受け入れられているように感じていたのがバカみたい。よそ者の私は、結局他人なんだ……。

「……もういい」

店から出ようと向きを変えると、

「余計なことはするなよ」

追い打ちをかけてくる声に足が止まる。

余計なこと……。

「詩織ちゃん。例の友季子さんもそう言っているんだし、関わらないほうがいいわよ、ね?」

和豆の声まで追い打ちをかけてくる。

振り向いてふたりを見た。

ならまちはずれで出逢った雄也と和豆。この数カ月で距離は近づいたと思っていた。

だけど……誰も私の気持ちなんかわかってくれないんだ。

「結局は他人だもんね」

言うつもりもなかった感情があふれた。

いぶかしげな表情の雄也。

「お前、なに言って─」

「心を許せないから壁を作っているんでしょ。雄也だってなんにも話してくれないじゃん」

ああ、ダメだ。話しながらどんどん興奮してきているのがわかる。だけど、止められなかった。

「いいから落ち着け」

「詩織ちゃん、とりあえずお茶飲んだらいいわよ」

ふたりの声もまるで遠くに感じる。

「穂香さんのことだってそうじゃん」

言うべきじゃないことはわかっている。

「みんなは知っているのに私だけ教えてもらえない」

人には踏みこんではいけないことがあるのも知っている。

「誰かの役に立ちたい、ってことが余計なことだなんて思えないからっ」

気づけば雨の町に飛び出していた。

カサもささずに逃げるように、ただ振り切るように。

息が切れて商店街を抜けるころにはなんだか泣きそうになっていた。

「……なんなのよ」

胸の奥がムカムカしていた。自分にこんな感情があるなんて、知らなかった。

トボトボと駅前まで来るとバス停に向かう。

もう、帰ろう。

みじめ、という言葉がピッタリだ。