暫く祝福が途切れるのを待っていたが、彼らは私たちに気付くと、すぐに笑顔を見せて近づいてきた。
「葵、萌音ちゃんまで、来てくれたのね嬉しい」
まるで女優かのようなオーラに圧倒されてしまい、私はすぐに言葉を発することができなかったが、葵は軽く会釈をした。
弟の晴は、あまり葵とは似ていない。中性的な葵に対して、晴はがっちりした体形で身長も私と変わらない。
まだ中学三年生だから、というのも理由のひとつだが、丸顔で短髪でまだまだ幼い印象があるし、鼻は低く目は細い。正直、兄弟と言われなかったら誰も気づかない程だと思う。
晴は大きな花束をこれ見よがしに抱え、葵の前に立ちはだかった。と言っても、葵の方がずっと身長が高いから、見上げる形になっている。
「俺、金賞受賞したんだ。これで俺も兄ちゃんと同じ成績を残せたんだ」
そんなに早口じゃ、読み取れるはずがない。そうだった、葵の家族は誰も手話ができないんだった。
葵に手話で通訳をして、晴の言葉を伝えると、葵はスマホに言葉を書き込んで晴に『おめでとう』と伝えた。
「この子、今凄く頑張っていて、本当に才能があるのよ。CDデビューも夢じゃないって言われたわ」
「やめてよ母さん、あんなのお世辞だよ」
「晴君、才能あるんですね」
私の言葉に、彼はまんざらでもない反応を見せたが、すかさず母がわざとらしい謙遜したような言葉を返した。
通訳するべきか悩んだが、私は『CDデビューもあるかもしれない』とだけ伝えると、葵はすごい、と口パクで答えた。
「……やだ、もしかして葵さんですか?」
その時だった。背後から驚いた様子の親子がやってきて、葵の顔をまじまじと見つめた。
娘さんが今日ピアノを弾いたのだろうか。年は晴と同じくらいだったが、興奮しきった様子の母とは対照的に、彼女は少し緊張した様子で葵を見つめていた。
「あの、うちの葵に何か……?」
葵の母が恐る恐る聞くと、その女性はあらやだ、お母さまですかと言って改めて頭を下げた。
「あなた、小学生部門で毎年金賞を受賞していた子よね……? とっても上手で、見た目も大人びていて、印象的だったわ。この子もあなたのファンでピアノを始めてね……」
女の子はこくこくと頷いて、必死に葵のことを見つめていた。
「葵、萌音ちゃんまで、来てくれたのね嬉しい」
まるで女優かのようなオーラに圧倒されてしまい、私はすぐに言葉を発することができなかったが、葵は軽く会釈をした。
弟の晴は、あまり葵とは似ていない。中性的な葵に対して、晴はがっちりした体形で身長も私と変わらない。
まだ中学三年生だから、というのも理由のひとつだが、丸顔で短髪でまだまだ幼い印象があるし、鼻は低く目は細い。正直、兄弟と言われなかったら誰も気づかない程だと思う。
晴は大きな花束をこれ見よがしに抱え、葵の前に立ちはだかった。と言っても、葵の方がずっと身長が高いから、見上げる形になっている。
「俺、金賞受賞したんだ。これで俺も兄ちゃんと同じ成績を残せたんだ」
そんなに早口じゃ、読み取れるはずがない。そうだった、葵の家族は誰も手話ができないんだった。
葵に手話で通訳をして、晴の言葉を伝えると、葵はスマホに言葉を書き込んで晴に『おめでとう』と伝えた。
「この子、今凄く頑張っていて、本当に才能があるのよ。CDデビューも夢じゃないって言われたわ」
「やめてよ母さん、あんなのお世辞だよ」
「晴君、才能あるんですね」
私の言葉に、彼はまんざらでもない反応を見せたが、すかさず母がわざとらしい謙遜したような言葉を返した。
通訳するべきか悩んだが、私は『CDデビューもあるかもしれない』とだけ伝えると、葵はすごい、と口パクで答えた。
「……やだ、もしかして葵さんですか?」
その時だった。背後から驚いた様子の親子がやってきて、葵の顔をまじまじと見つめた。
娘さんが今日ピアノを弾いたのだろうか。年は晴と同じくらいだったが、興奮しきった様子の母とは対照的に、彼女は少し緊張した様子で葵を見つめていた。
「あの、うちの葵に何か……?」
葵の母が恐る恐る聞くと、その女性はあらやだ、お母さまですかと言って改めて頭を下げた。
「あなた、小学生部門で毎年金賞を受賞していた子よね……? とっても上手で、見た目も大人びていて、印象的だったわ。この子もあなたのファンでピアノを始めてね……」
女の子はこくこくと頷いて、必死に葵のことを見つめていた。