たっぷり一時間半以上かけて、夕飯がやっと出来上がった。

お父さんが帰宅する七時にギリギリ間にあって、ホッとしたけど、かなり疲れた。

サラダに、生姜焼き、豆腐とネギとワカメのお味噌汁。そんな大したメニューじゃないのに、出来上がった時は思わず『疲れたー』と声に出してしまうほどだった。

これを毎日パートの後にこなしてるお母さんってすごいかも。

帰ってきたお父さんと、少し横になったことでだいぶ楽になったと言うお母さんと食卓を囲む。

「くるみが作ってくれるなんて、小学校以来じゃないか?」

確かに。うちの台所に立つのは、小学校六年生の時の、夏休みの家庭科の宿題以来かもしれない。
「作り方、よくわかったわね」

お母さんも喜んでくれた。

正直に言うと、味はイマイチだったけど(ご飯は硬いし、お味噌汁は薄いし、生姜焼きは焦げ気味だし)、久しぶりに食卓は穏やかな雰囲気だった。

「大丈夫なのか?」

寝込んだと聞いて、お父さんも心配になったらしい。

「帰ってきたらめまいがひどくて。暑かったから……」

「病院に行ったほうがいいんじゃないか」

お父さんの提案に、わたしもうなずいた。

「そうだよ、病院行きなよ」

「大丈夫よ、休めないもの。それに、久しぶりに人が作ってくれたご飯食べたら、元気出たわ」

そう言って、お母さんはいつものようにテキパキと後片付けを始めた。

わたしがお風呂から上がってきたら、お母さんは洗濯物をたたんで、お父さんのワイシャツのアイロンをかけているところだった。

「わたし、やるよ!」

「もう終わるわよ」

「早く寝ればいいのに」

かわいくない言い方をしながらも、わたしは少し反省していた。

やっぱり、もう少し手伝わなきゃダメだな。お母さん、絶対に疲れてるんだよね。

「お母さん、わたし明日は家にいるから。わたしがやっておいたほうがいいこと、教えて」

ソファで横になるお母さんの青白い顔を見た時に感じた心細さを思い出すと、さすがになにもしないわけにはいかない。

わたしの言葉に、お母さんはうれしそうだった。「あら、たまには具合悪くなるのもいいわね」なんて言って笑った。