「気持ちいいんだよ。幸せだって言ってるんだよ」

そう説明するわたしの声が泣き声になってしまい、凪が驚いた。

「どうした? くるみ?」

凪の手が止まってしまい、ぶっちーが不満そうな顔になる。

「なんでもない。いいから続けてあげて」

その様子を見ながら、わたしは泣かないようにするのに必死だった。

記憶をなくしても、体が覚えてるってことがあるのかな。
繰り返し続けてきたことが脳を超えて体に染みついてる、なんてことが。

だとしたら、やっぱり凪とぶっちーの絆は消え去ったわけじゃない。
積み重ねてきた分だけ、ちゃんと残ってるんだ。

よかったね、ぶっちー。
やっぱり凪はぶっちーのことが大好きだったんだよ。
記憶を失っても、体が覚えているなんて、絆の強さの証拠だよ。

もう半ば目を閉じて、ぐるぐると喉を鳴らしているぶっちーを見ながら、わたしは凪に気づかれないように、涙をぬぐった。