「凪が宛先人不明の手紙の思いを読んだと言ってる。どうしてそんなことをさせた?」

「わたしがさせたんじゃないよ……」

おじいちゃんがわたしを見る目が怖くて、わたしは弱々しく答えた。

「一緒に郵便局に行った時に、たまたま宛先人不明の手紙があるって話を聞いて。そしたら、凪がその手紙に触れた途端、倒れちゃって」

「え? 凪くんが? 大丈夫だったの?」

おじいちゃんとわたしの間のただならない雰囲気にオロオロしていたお母さんが驚いて口を挟んだ。

「大丈夫なんだけど……、でも少し変なことが起きて」

「変なこと?」

わたしはしばらく黙り込んだ。わたしにもすぐには信じられない出来事が起きたのを理解してもらえるか、自信がなかった。

「凪ってば、手紙を書いている人の状況や思いが見れたっていうの。思いが体に流れ込んでくるって……」

「は?」

案の定、お母さんは素っ頓狂な声を上げた。

当たり前だと思う。わたしだって今日たくさんの奇跡を見ることができたから信じられたけど、話だけではそう簡単に納得できることじゃない。

でも、おじいちゃんは真剣な顔をしたままわたしを見つめている。

「凪が手紙の思いを読んだおかげで、わからなかった宛先人が直売所のゆきさんだって判明して……それで、ちゃんと渡すことができて。返事も届けてあげることができたの」