翌日、わたしはなんだか気になって朝から郵便局に行ってみた。
すると、まだ開業前なのに、凪が自転車に座って待っていた。

「……やっぱり凪も来たんだね」

「昨日、寝れなくて」

「そっか……」

開業時間になるとシャッターが開いた。中から驚いた顔をしたお父さんが見えた。

「なんだ、どうした」

「お父さん、昨日の手紙、何時ごろ返送するの」

「返送は一回目の便が十一時に出るから、その時だな」

その言葉を聞いて、凪の顔が緊張したのがわかった。
いまは九時だから、あと二時間以内にゆきさんが来なかったら、あの手紙は返送されて、送り主の元旦那さんのところに返されるのだ。

「いや……、でも昨日の手紙なら、今日『海と山のマルシェ』に配達するように、ゆきさんから朝一で連絡があったよ」

思いがけない言葉に、わたしも凪も驚いた。

「だから午前中の配達で、ゆきさんのところに届くよ」

凪がはーっとため息をついた。

「そっか……、よかった。あの手紙、読んでもらえるんだ」

と、お父さんが怖い顔になった。

「今回はたまたま喜んでもらえたからよかったけれど、もしかしたらプライバシーの侵害だとか、郵便局の管理体制を問われたりしたかもしれないんだぞ」

「あ……」

「……こっちは連絡が来た時、ひやひやしたんだからな」

凪は申し訳なさそうな顔で、「すみません」と謝った。

「なによー、いいじゃない。手紙を届けるのが仕事でしょ。凪のおかげで仕事が全うできたんだから、お礼言ったっていいところじゃん」

「くるみ」

凪がわたしの肘をつつき、お父さんがコツンとわたしの頭を小突いた。

「まあ、結果オーライで何よりだ」

そう言うと、お父さんは郵便局の中に戻って行った。

「あの手紙がゆきさんにとっていい手紙であることだけを祈るよ」

去り際に残した言葉が、わたしと凪の心に引っかかっていた。