「なんか……、もしかして余計なことしたのかな」

ぽつりと凪が言った。

「僕……自分が母さんからの手紙を待ってるもんだから、つい熱くなっちゃって」

はっとした。

そうだ、凪はずっとお母さんからの手紙を待っている。
凪にとって一番欲しいものがそこにあるのに、宛先だってわかったのに、返送されてしまうことがやりきれなかったんだ。

「でも、その人の置かれてる状況によっても違うよな。ゆきさんは新しい人生を歩いてるんだもんな」

ふー、とため息をついた。
先ほど前の勢いとはうって変わって、反省している様子を見ていたら、凪は本当にお母さんの手紙を待っていたんだなとわかってしまった。
もちろん今までも知ってはいたけど、実感として思い知らされた気がした。

「……凪のお母さんはどうしてるんだろうね」

思い切って言ってみた。
凪が人の手紙にここまで必死になる姿を見てたら、お母さんのことをどう思っているのか本当のところを知りたいと思った。

「手紙、全然来ないもんね」

ちょっと意地悪な気持ちになって、そんなことを言った。
だって、わたしもおじいちゃんもいるのに、それでもそんなにお母さんが恋しいんだと思ったら、なんだか悲しくなってしまったのだ。

「なにやってるんだろう。本当にわからないよ」

凪はそう言った。

「でも、絶対に迎えに来るからねって言ったんだよね。一緒に住めるようになったら、迎えに来るからねって」

お母さんのことを話す凪の声は穏やかだった。