わたしも海に視線を向けると、ちょうど熟したオレンジのような太陽が、海に溶けるように沈んでいくところだった。

眩しい黄金色の光が、戻ってきた凪を祝福するかのように照らしている。
海から吹く風には早くも秋の気配がにじみ、ひんやりとしていた。

絶えず打ち寄せる波の音、少しずつ群青色に変わっていく空、そしてわたしの隣でじっとその景色を見つめる凪。

わたしと凪の物語が再び始まる最初の1シーンとして、完璧だった。


美しくて、儚くて、愛しい、大切な風景だ。


「東京は楽しかったの?」

「悪くなかったけど、人も建物も詰め込まれてて、僕には息苦しくて……」


わたしは、まだ遠慮の残る凪と話し始めた。

またこうやって一緒に過ごす時を、積み重ねていこう。

少しずつ、少しずつ。ゆっくりでいい。

わたしは凪との間に新しい物語を作れる喜びを感じていた。




終わり