凪がいなくても、時は流れる。

あと一週間もすれば、二学期が始まる。

無理にでも気持ちを切り替えようと、わたしは部屋にこもるのをやめた。
毎日ちゃんと朝に起きて、朝ご飯を食べ、一日をスタートさせるようになった。

わたしが一見、前と変わらずに生活するようになったことで、お父さんもお母さんもホッとしたようだった。お兄ちゃん家族がやってきた後の生活や、生まれてくる双子の話題で、できる限り食卓を明るくしようとしてくれるのがわかった。

だからわたしもできるだけ笑顔で、できるだけ騒々しく話に応じようと努力した。

それでもどうしても心に空白が生まれて、そこにはまり込んでしまうことがあった。
ハッと気づくと、お母さんが心配そうにわたしの顔をのぞき込んでいて、わたしは「ごめんごめん」とあわてて取り繕った。

今はつらくても、時が経てばきっとこの生活が当たり前になるはずだ。

そう必死で自分に言い聞かせていた。