でも、そうせずにはいられなかったおじいちゃんの気持ちが、うれしかった。

凪はなにに感謝して、なにを謝っているのか、本当はわからないんだろうな。
おじいちゃんに真剣に怒られて、とにかくやらなきゃって自分に言い聞かせているだけなんだろうな。

そう思ったら、目の前で頭を下げる凪がかわいそうになってきた。

「凪……、最後に握手しよっか」

「あ、はい」

わたしが手を差し出すと、凪はそっと手を握ってきた。

あの時、海に落ちる夕陽が見える丘で、満帆さんと手をつないだ凪が思わず涙を流したように、凪の中に残るわたしの残骸が暴れ出してくれないかなと念じて、わたしは強く強く握りしめた。

でも凪にはなにも変化は起こらず、痛そうに顔を歪めただけだった。

ダメか……、やっぱりわたしは凪の中には残ってないんだ。
お母さんを思っていたほどには、わたしのことは思っていなかったのかな。

そう考えると、また鼻の奥がツンとした。

「……凪、元気でね」

「くるみちゃんも」

それ以上一緒にいると、みっともなく泣いてしまいそうだった。
わたしはやっとの思いでニコッと笑ってみせて踵を返し、駆け出そうとした。

その時……。
「くるみ!」

聞き慣れた凪の声がして、思わず振り向いた。

とっさに呼び捨てにしまった自分に驚いたのか、凪が『あっ』という顔をして立っていた。