「そんな大げさな……」

「大げさじゃない。くるみちゃんは凪にとって、代わりのない人だ。わたしにとっても大事な、家族も同然の女の子だよ」

おじいちゃんは怒ったような声で断言した。

そんなふうに言われると、泣けてくる。だから必死で笑い飛ばした。

「おじいちゃんてば、もういいから!」

「凪、くるみちゃんのことは、お前に話した通りだ。お前がくるみちゃんを忘れたままいなくなるなんて、本当は許しがたいことなんだ。だから……ちゃんとお礼を言いなさい。わからなくても、いい。とにかく『ありがとう』を言いなさい」

おじいちゃんにそう言われて、凪は困った顔をしていた。

「わかったな」

おじいちゃんはそう念を押すと、向こうで心配そうな顔でこちらを見ながら待っている満帆さんのところに行ってしまった。

ふたりきりにされて、わたしたちの間には沈黙がおりた。

「あ……くるみちゃん」

沈黙に耐えられなくなったのか、凪が言葉を発した。

『くるみちゃん』と“ちゃん付け”する凪の不慣れな感じに、また小さく傷つく。

「おじいちゃんに、いろいろ聞きました。……今まで、ありがとうございました」

凪が礼儀正しく頭を下げる。

「なんか、すみません、忘れてしまったみたいで……。おじいちゃんにはむちゃくちゃ怒られたんですけど、どうしても思い出せなくて……」

その言葉に、つい笑ってしまった。

おじいちゃんてば、怒ってもしょうがないことなのに。