その後は、もう言葉にならなかった。
湧き上がってくる涙に任せて、泣き続けた。
そんなわたしをお母さんはずっと抱いていてくれた。
まるで赤ちゃんにするように背中をトントンと叩きながら、優しく強く抱きしめていてくれた。
「凪くんは忘れちゃったかもしれないけど、でもみんな覚えてるよ。お母さんも、お父さんも、凪くんのおじいちゃんも……。くるみがどれくらい凪くんを大事に思ったか。きっと、ずっと忘れない。みんなが、くるみはすごいなって本当に思ってる。だから、くるみが凪くんを愛した事実は永遠になくならないのよ」
お母さんはそう言ってくれた。
わたしはただただ声を上げて、涙を流し続けた。
本当は凪にわかってほしい。わたしがどれほど凪を好きで大事に思っていたかを。
思い出してほしい。
一緒に過ごした時間、たくさん笑い合ったこと。
晴れた日も、雨の日も、一緒に学校に通った日々。
小さなケンカも、秘密のいたずらも、ふたりでいろんな感情を共有して、たくさんの経験をしたことを。
そして、最初で最後のデートも。
あの日、『くるみは特別だ』と言ってくれた。
その時に感じた、震えるほどの幸福感も、逆に幸せすぎて感じた不安も、そのすべてが宝物のような思い出だ。
わたしたちの日々はこうして突然、断ち切られるようにして終わってしまったけれど、わたしの中には、あの時のひとつひとつの感情が今でもリアルに残っている。
それが、今はまだわたしを苦しめるけれど、いつか幸せな青春時代の思い出として懐かしく思える日が来るんだろうか。
わたしはまたベッドに横になった。
この先、凪が隣にいてくれないと想像すると、力が出ない。
でも、凪がいなくても日々は続いていくんだよね……。
わたしは絶望的な気持ちになって、枕に顔を埋めた。