次の日も、朝から凪の家に行った。

『おはようございますー』と言いながら玄関のドアを開けて、ずんずん入り込んでいくのがいつものことだった。
でも珍しいことに、凪の家には鍵がかかっている。

「おじいちゃん? 凪?」

外から大声で呼びかけても、家の中はしんとしている。

ふと見ると、ブッチーの餌をあげる小さなステンレスのボウルがひっくり返っている。

誰かがあわてて蹴ったみたい……。

そこまで考えて、わたしはハッとした。

もしかして、凪になにかあった?

不安な気持ちを抱えたまま自宅に帰ると、パート先のお母さんから連絡があった。

『くるみ?』

電話越しのお母さんの声は切迫していた。

わたしも途端に緊張する。

『凪くんがね、昨夜、救急車で搬送されたらしいの』

その瞬間、足がガクガク震えて、立っていられずしゃがみ込んだ。

『くるみ! くるみ? 聞いてる?』

お母さんに呼びかけられて、わたしは必死で答えた。

「うん、聞いてる。大丈夫」

『多分、隣り町の総合病院だろうって。今、調べてもらってるから。わかったら、お母さんも一緒に行くから待ってて』

「うん、わかった」

わたしは不安な心を抱えたまま、電話を切った。