わたしが指摘すると、凪が恥ずかしそうな顔をした。

「別に構わないけど。僕はくるみのことが好きだし」

「え?」

「ん?」

とぼけた顔をする凪に、わたしは「もう! なんでそういう大事なことをさらりと言うの! わたしにとって初めての告白なのに」と騒ぐ。

そんなわたしに、凪は「あはは」と笑った。

「なんか今日は変だね。いつもと違うことをしたからかな。普段なら言わなくてもいいかなってことを口にしたくなる」

そうかもしれない。
今日一日、わたしはずっと念じていた。

『わたしのことを忘れないで』『覚えていて』と。

もしかしたら近いうちに忘れられてしまうかもしれないという恐怖が、凪といる一瞬一瞬を輝かせ、共に過ごす時間が宝物のように思えた。

顔を見合わせて笑い、はしゃいだ声を一緒に上げる時間が幸せであればあるほど、これから訪れるかもしれない喪失感に怯え、不安になった。

そんなわたしの心にある淀(よど)みを、凪は感じ取ってくれたのかもしれない。
いつも以上に優しく、気を遣ってくれたような気がした。

「隣にくるみがいるってわかってるから、僕は迷わないでいられるって、最近思うんだ。くるみは特別だよ。今までもこれからも」

その言葉に堪えられなくて、涙が出た。幸せすぎて怖くなる。

「くるみ……なんで泣くの?」

戸惑った顔でたずねてくる凪に、わたしは『なんでもない』と言うように首を横にふった。

凪がそっとわたしを抱きしめてくれる。