もう帰宅していたお父さんとお母さんにリビングですべてを打ち明けた。

玲美さんの手紙を読んでもらって以来、凪は自分のお母さんのことをすべて忘れてしまったこと。
おじいちゃんはそれでよかったんだと言ってくれていたけれど、多分それは満帆さんがもう帰ってこないことが前提だったであろうこと。
そして、今日の凪と満帆さんの再会で、本当に凪は見知らぬ人を見る顔をしていたこと。

「おじいちゃんに二度と手紙の思いを読ませないようにって言われてたのに……」

わたしが鼻をすすると、黙って聞いていたお父さんが口を開いた。

「でも、あの時、凪くんが手紙の思いを読んでくれていなかったら、うちはまだ翔となんの話し合いもできていなかったかもしれない」

「……そうよね。お母さんも凪くんの能力の話を聞いた時は半信半疑だったけれど、あのことでは本当に凪くんに感謝しているのよ」

うなだれるわたしの背中を撫でながらお母さんもわたしを慰めるように言った。

「もう少し遅かったら、玲美さんは追いつめられて、悲しい決断をしていたかもしれないし」

そう言って、お母さんは心なしかぶるっと震えた。

「でも、我が子が自分の存在すら覚えてないって考えると、確かにつらいわね」

「しょうがないだろう。もう何年もほったらかしだったんだから」

お父さんがわたしを気遣ってか、あわてたようにフォローした。

「それはそうだけど」

「自業自得だよ。くるみが悪いわけじゃないんだから、気にすることはないさ」

お父さんは強い口調になっていた。

「でも、なにか方法はないのかしら……」

お兄ちゃんとの絆を取り戻したばかりのお母さんは、満帆さんの気持ちもわかるのだろう。いつまでも考え込んでいた。