日が暮れて真っ暗になってしまったので、おじいちゃんが車で家まで送ってくれた。

おじいちゃんもわたしも無言だった。
車なら十分もかからない道のりなのに、その十分がとてつもなく長く感じた。

自宅に到着して、わたしが車から降りようとした時、おじいちゃんが「くるみちゃんはなにも心配しなくていいからね」と言ってくれた。

わたしは小さくうなずき、でも、その後に思わず深々と頭を下げてしまった。

本当だったら、凪にとってだけじゃなく、おじいちゃんにとってもうれしい娘の帰郷になっていたかもしれないのに。家族の間のわだかまりが溶けて、幸せな再会になっていたかもしれないのに。

足取り重く家に入ると、お母さんが玄関まで出てきた。

「くるみ、もしかしたら凪くんのお母さん、帰ってきたかもしれないのよ。なにか聞いた?」

「え?」

「ちょっと噂になってたの。凪くんのお母さんに似た人が、駅にいたって」

わたしはなにも答えられなかった。ポロポロと涙があふれてくる。

「ど、どうしたの? くるみ」

お母さんがあわてた声を上げた。

わたしは立ち尽くしたまま、涙をこぼし続けた。