わたしたちが玄関を出ると、外はもう日が沈んで、暗くなっていた。
門灯のあかりがギリギリ届くコンクリートのたたきのところにぶっちーがゴロンと横になっている。

「ぶっちー」

凪はホッとしたように呼びかけると、その傍らにしゃがみ込んだ。
すると当たり前のようにぶっちーがお腹を見せて仰向けになる。

「もう、前と変わらないね」

凪にお腹を撫でられてゴロゴロと喉を鳴らすぶっちーの姿に、思わずわたしはつぶやいた。

「前、ね……。そう言われてもよくわかんないけど」

凪は少し苛立っているように見えた。

「でも、ぶっちーのことを忘れる前もこんな感じだったんだよ」

「そっか。まあ、ぶっちーかわいいからな」

そう言いながら、凪はぶっちーのお腹を撫で続けた。

「くるみ」

「なに?」

「あの人さ、お母さんって言ってたよね。……僕のお母さんってことだよね?」

その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。

そう、凪がずっと待ちわびていたお母さんだよ。
もう来ないかもって誰もが思っていたのに、凪だけがずっと信じていた人。そして、凪の信じた通り、ちゃんと迎えに来た。