――あの夜、神社で目を覚ました凪がわたしに話してくれたのは、手紙を書いている玲美さんが相当追いつめられた気持ちでいるということだった。

「なんか、翔くんのお嫁さん、妊娠してるんだよ」

「え? ふたりめを? もう?」

そんなことをかけらも予想していなかったわたしは、ひどく驚いた。

凪は、戸惑い気味に続けた。

「しかも双子だってことがわかって、ものすごく不安になってる」

正直に言うと、わたしにはその大変さがぴんとこなかった。

でも凪は、玲美さんが年上なこと、そのせいで育児と仕事の両立に体力的にしんどさを抱えているらしいこと、そして経済的にやっていけるのかを、かなり不安に思っていると教えてくれた。

「彼女には身寄りがいないんだ。だから、頼りなのはくるみの両親だけ。でも翔くんに、自分がちゃんとするまでは実家に顔見せできないって気持ちがあるのを理解しているから、言い出せないでいるんだ」

「そっか……。お兄ちゃんは、お父さんやお母さんに顔向けできないって思ってるんだ。嫌ってるわけじゃないんだね」

お父さんが心配していたように、憎んだり、恨んだりしてるんじゃないんだということがわかっただけでも、少しホッとする。

「翔くんに言わないで、堕(お)ろしたほうがいいのかもって思ってる」

その言葉に、わたしは飛び上がるほどびっくりした。

「え?」

「翔くんに話してから堕ろすと、翔くんが自分の不甲斐なさを責めそうでかわいそうだと思ってる。経済的にもっと落ち着いてからふたりめは考えたいけど、でも年齢的にこれを逃したらもう無理かもとか……。いろんなことを考えて、ひとりで悩んでるんだ」

年子で双子って、結婚してるのに赤ちゃんを堕ろすなんてことを考えなきゃいけないくらい大変なことなの?

わたしには全然想像もつかなくて、イマイチその切実さが理解できなかった。

だから翌朝、わたしは台所で朝ご飯の支度を手伝いながら、お母さんに聞いてみた。