「わたし、若くないし、親はもういないし。経済的にも体力的にも三人をちゃんと育てていけるのかなって不安でしょうがなくて」

お兄ちゃんは呆然とした顔で玲美さんを見ていた。

「今回はあきらめたほうがいいのかなって考えたり。でも、翔ちゃんの子供、絶対産みたいし。いざという時に助けてくれる人がいたら、どんなに安心だろうって……」

肩を震わせて泣き始めた玲美さんのことをわたしは思わず抱きしめた。

子育ての大変さはわたしにはわからないけど、フリーターの夫との間にいきなり子供が三人になるって考えたら、それはかなり心細いだろうなということくらいは想像できた。

「双子……。まじか……」

まだ現実に対応できていないお兄ちゃんに、お父さんが低い声で語りかけた。

「なあ、翔。帰ってこないか」

「え?」

お兄ちゃんが目を見開いた。

「町での仕事なら、お父さんも口をきいてやれる。これでもあの町にはそれなりに築いてきた人間関係があるし、信頼もまあそれなりにある。バイトするよりは安定した仕事を見つけてやれると思うぞ」

お父さんは穏やかな声を出し、続けて華ちゃんのそばにいるお母さんのほうを向いた。

「それに、子供たちのことも手伝える。なあ」

すると、お母さんが張り切った声を出した。

「もうお母さん、パートなんてやめちゃうわよ。孫が三人もいたら、それどころじゃないもの。玲美さんが仕事したいっていうんなら、保育園の送り迎えだって、食事のことだって、いくらでもやってあげるわよ」

「お母さん、まだ若いもんね」

わたしは笑いながら茶化す。

「そうよ、孫の面倒をみるのだって、体力いるんだから。早めに産んでくれてありがたいのよ」

その間、お兄ちゃんは黙っていた。意地を張っているとかそういうことではなく、本当にどうしていいのかわからなかったんだと思う。

「ね、翔ちゃん、お願い。なにか言って」

玲美さんがお兄ちゃんを促した。

お兄ちゃんはハッと我に返って、テーブルの上のエコー写真を取り上げた。そして、泣いている玲美さんを見つめた。