「玲美さんが手紙をくれたの。華ちゃんの写真も入れてくれて……。それで、会いたくなって、探したの」

わたしと玲美さんだけで必死で話した。

でもお兄ちゃんは、お兄ちゃんを見るだけでなにも言わないお父さんのことが誰よりも気になるようだった。無言の威圧感に、どんどんパニックになっていくのがわかる。

「なに、勝手なことしてるんだよ! 俺、余計なことはするなって言ったよな」

動揺を玲美さんにぶつけた。

「だけど、やっぱりおかしいよ。結婚も子供が生まれたことも報告しないなんて」

玲美さんは必死でお兄ちゃんに訴えかける。

その時、とうとうお父さんが言葉を発した。

「翔、お前、仕事はなにをしてるんだ」

その言葉に、お兄ちゃんは心から嫌そうな顔をした。

「久しぶりに会って、それかよ」

「なんの仕事をしてる」

「コンビニでバイトしてるよ」

お父さんの眉がキリキリと上がった。

「それで家族三人食べていけるのか」

「なんとかやってるよ」

「わたしもパートしてますから」

あわてた様子で玲美さんが助け船を出した。

「バイトとパートって、子供もいるのに、それでこれからもやっていけるのか」

お父さんの言葉に、お兄ちゃんが怒鳴った。

「そういうことしか言わないから嫌なんだよ!」

お兄ちゃんの剣幕に、華ちゃんがぐずりだした。

お母さんがベビーベッドに駆け寄る。

「こっちはふたりでがんばって、なんとかやってんだよ! 余計なこと言うなよ!」

「本当にちゃんとやってると思えているなら、結婚の報告くらいできるだろう。人並みのこともできていないと思うから、連絡できなかったんじゃないのか」

突き放すような言葉に、お兄ちゃんがお父さんをにらみつけた。

「違います!」

突然、玲美さんが叫んだ。

「翔ちゃんが報告できないのは、わたしが年上だから……。それに親もいないし、学歴もないし、結婚を反対されるんじゃないかって心配だったからです。わたしに嫌な思いをさせたくなかったんだと思います。だから、わたしのせいなんです。本当にすみません」

そう言って、玲美さんは深々と頭を下げた。